ベタ基礎コンクリート、基礎断熱、UB・洗面所

省エネ住宅の落とし穴

省エネ住宅の定義はありませんが、無難なところとして「断熱性能等級4」とすると「省エネ住宅ポイント」を貰えるくらいといえます。判断基準を外皮計算にしろ、部位の熱抵抗値にしろ、仕様基準にある組合せにしろ、性能差はほとんどありません。あくまでも「基準」という絶対評価をクリアしただけとなります。私個人の考えですが、「省エネ住宅」と言えないのではないかなぁ、という住宅をみかけます。設計上は「基準」をクリアしているのですが、実際はどうなんだろう?というものです。このよく目にする省エネ住宅の落とし穴を以下にまとめてみました。

土間床等の無断熱仕様

H25年省エネ基準では土間床等の無断熱仕様を許容しています。土間床等とは、玄関・UB・勝手口などの床部分を土間コンクリートとしている室のことをいいます。床の断熱方法を基礎断熱としている場合は、これらの部分も含めて断熱するので無断熱とはなりませんが、床断熱の場合は無断熱としているケースをよくみかけます。無断熱とは言葉の通り、断熱材を全く施工しないことです。

コンクリートは熱伝導率が1.6W/(m*K)と高く、そのままでは熱的に非常に弱くなります。夏は日射を強く受けない限りはひんやりとしていても、冬は容赦なく外の冷気を伝えてきます。国民アンケートによると「冬に寒さを感じる部屋」という項目では「お風呂」「台所」「トイレ」「玄関」が上位を占めます。土間床部分が関係する部屋に寒さを感じている証拠です。

では、何故土間床等の無断熱仕様が認められているのでしょうか。恐らく、施工上の問題では無いかと思われます。土間床等の部分を断熱する方法は、基礎断熱しかありません。部分的な基礎断熱となるため基礎の外側には施工し難いため内側への施工となります。玄関や勝手口などでは、仕上げとして見えがかりとなる部分にも断熱材の施工が必要になります。(この部分のみ断熱材を省略するという考え方もあります)また、床断熱と基礎断熱の境目となる部分には気密処理も必要になります。UBの場合は、脱衣室との床下点検スペース・配管部分の処理が必要となります。また、UBの床下空間の気密処理も必要です。

こうした部分の施工は、慣れないうちは難しく感じるものです。故に、必須施工とすると現場で対応しきれないと考えられたのかな、と思います。許容されているのはあくまでも「無断熱」であって「気密処理」は本来は必須施工です。しかし、現実的には「無断熱」としている現場は「気密処理」も行われていないでしょう。(気密処理に配慮できるならば「無断熱」にするとは考えにくいため)

現場検査の有無

「断熱性能等級4」や「一次エネルギー消費量等級5」の判断はどのようにして行われているか。これは机上の判定となります。住宅性能証明やフラット35など一部には現場検査がありますが、最も認定数の多い「省エネ住宅ポイント」には(省エネ施工の)現場検査はありません。

必要な断熱材の厚みやサッシのグレードを申請した内容と偽るようなことは無いと思いますが、設計(認定)されたとおりに断熱材の施工をしきちんと気密・防露の処理が出来ているかは非常に疑わしいところです。省エネ住宅を数多く手がけてきている施工者なら安心できますが、「エコポイント」などの時だけ仕様を変更している場合は不安になります。

「気密処理」の方法や「防湿層」の役割、「通気層」の施工方法など、とても重要なことがあります。これらをきちんと施工できなければ、本当の意味で省エネ住宅にはなりません。場合によっては、断熱材やサッシの性能を著しく損なう可能性もあります。

検査機関では任意で「断熱施工検査」を受け付けているところを私は知りません。断熱施工の精度を確認するには、「気密測定」などの検査をするか、断熱施工を理解している建築士による工事監理で性能を担保するしか無いと思います。

繊維系断熱材の天井断熱

繊維系断熱材として天井断熱に使われているものは、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバーなどがあります。そのうち袋詰めされたグラスウールとロックウールが7割以上と思います。袋詰め以外のものはブローイング工法で文字通り天井に断熱材を吹き込んで敷き詰める工法です。

繊維系の断熱材を天井に施工する場合、室内側に防湿層の施工が必須です。ブローイング工法の場合は、専用の機材で専門業者が施工するため防湿層などの下地はキッチリ施工されます。問題は大工さんが施工する袋詰め断熱材です。

正しい施工方法としては、天井下地材に防湿フィルムを施工してから石膏ボードなどの天井材を張り上げます。多くの施工者に勘違いされていることとして、「袋詰めなんだからこれが防湿層になるんだ」ということがあります。外壁面に施工するときは断熱材の入っている防湿フィルムを隙間なく連続に施工できるので、これをもって防湿層とできますが天井面では連続させることができないためNGとなります。

天井面の防湿層は同時に気密層も兼ねるので、キチンと施工出来ていなければ断熱材はその性能を発揮できません。室内側の使用状況によっては内部結露を引き起こすこともあります。

私個人の見解としては、袋詰め断熱材の天井施工は非常に施工難易度が高く、手間暇かけても不完全なものになりやすいと思っています。

防露性能

防露性能というのは、「結露しにくい性能」という意味です。「結露をしない」という訳ではありません。室内外で温度差があり、湿度の高い日本ではこの「結露」を上手にコントロールしなければなりません。

中古住宅の現況検査をしているとかなりの件数で「白蟻被害」があります。一概には言えませんが、「白蟻被害」のそもそもの原因は「雨漏り」「結露」がほとんどと見受けられます。そのくらい「結露」というのは住宅にとって避けたい現象なのです。

住宅で発生する結露には「表面結露」と「内部結露」があります。「表面結露」の多くは住まい方によるものです。窓を閉め切った状態で、ヤカンを載せたままガンガンストーブを焚く、部屋干しした洗濯物にエアコンの温風を当て続ける、などです。部屋の換気がある程度できればかなり防げるのが「表面結露」です。

一方、「内部結露」は壁や天井、床下内部で発生する結露です。結露しても目に見えません。そして、躯体内部の結露のため柱や梁などの木部を濡らしてしまいます。少量であれば自然に乾燥しますが、ずっと結露し続けるような状態だと木材が腐朽し、白蟻被害などを受けやすくなります。

「内部結露」を防ぐ方法は、適切な断熱設計と施工時の現場監理が重要です。防湿層、気密層、通気層、断熱層、それぞれのもつ役割をキチンと把握していなければなりません。リフォームで「内部結露」対策を行うのはとても大変で、コストが非常にかかります。

 


外皮計算や一次エネルギー消費量の計算をすることで住宅の省エネルギー性能を比較評価しやすくなりました。ただ、基準値をクリア=省エネ住宅ではないことに注意が必要です。特に一次エネルギー消費量の計算結果は、生活スタイルにより実質の消費量と大きく異なる可能性があります。

計算では見えてこない部分にも、快適な省エネライフのカギが隠されています。