基礎断熱、H25年基準、モデル

基礎の熱貫流率を計算と比較

H25年省エネ基準では、基礎部分の計算方法が変更されました。基礎面積や周長(長さ)の拾い出しルールや熱貫流率の計算式が主な変更点です。

変更点を分かりやすくするためにH25年基準とH11年基準それぞれの方法を記事にします。又、数値的にどのように変化したのかを確認する意味で、計算もちゃんとしました。

  1. H11年基準とH25年基準の違い
  2. 周長の拾い出し比較
  3. 熱貫流率の比較
  4. 貫流熱損失量の比較

H11年基準とH25年基準の違い

H11年基準での基礎部分の計算は

  1. 土間床外周部の基礎周長(m)(下図の緑色部分)と外周部から1m以上の土間床等の面積(m2)(下図の水色部分)を拾い出す
  2. 上記それぞれの熱貫流率を求める
  3. 上記それぞれの貫流熱損失の合計を求める
基礎断熱、モデル、H11
基礎断熱熱的境界層(H11年基準)

という流れでした。「ウチは床断熱で基礎断熱はしないから関係ないよ」と思っている方が多いのですが、1階の下部方向の断熱を床断熱にする場合でも、この基礎部分の計算は必須でした。というのは、玄関部分とユニットバス(又は在来風呂)の床部分は他の床部分の断熱とは異なり、基礎断熱するしか方法がないからです。

これは、H25年基準でも同様で床断熱仕様であっても玄関とユニットバス部分の貫流熱損失量は計算して求めなければなりません。つまり、基礎部分の計算は断熱工法問わず必須になるわけですね。

H25年基準の基礎部分の計算方法は

  1. 外気に接する部分(下図の水色部分)と床下に接する部分(下図の黄色部分)の基礎周長(m)を拾い出す
  2. 基礎の断熱仕様に応じて、熱貫流率を計算する
  3. 外気に接する部分と床下に接する部分それぞれの貫流熱損失量を計算する
基礎断熱、H25年基準、モデル
基礎断熱熱的境界層(H25年基準)

という流れになります。新基準の方が拾い出しはいたってシンプルです。次項から旧基準と新基準の数値の比較をしていきます。

周長の拾い出し比較

基礎の周長というのは、基礎の周りの長さのことです。熱的境界層となる基礎の立上り部分のことをいい、全面基礎断熱であれば外周部の基礎立上りの長さ、床断熱であれば玄関(UB)部分の基礎立上り長さとなります。

参考モデルプランは床断熱のベタ基礎コンクリートとしました。

基礎断熱、モデル、イメージ
基礎断熱モデルプラン

計算を簡略化するために、玄関とUB共に1,820×1,820(mm)の1坪のプランとします。建物全体の間口と奥行き寸法は、9,100x6,370(mm)の17.50坪の大きさとします。

H11年基準とH25年基準それぞれのルールで周長などを拾い出すと以下のようになります。なお、玄関とUB部分のみでの比較とするため、その他床部分(床断熱部分)を除いた拾いとしています。

H11年基準 H25年基準
外周部より1m以上の土間床部分 0
外気に接する周長 5,460 5,460
床下に接する周長 5,460 5,460

(単位はmm)

熱貫流率の比較

周長と面積の拾い出しが出来たら、次に基礎の熱貫流率を計算します。基礎の熱貫流率の計算式はH11年基準とH25年基準で全く異なります。どのようなロジックでこのような計算式になるのかは分かりません(実務設計レベルでは恐らく不要な知識でしょう)。

【H11年基準】

土間床外周部の熱貫流率=UL
UL=1.77+0.5λsoil-0.77T10.15-0.003W-0.042T2

土間床中央部の熱貫流率=UF
UF=0.022+0.054λsoil

基礎断熱、モデル
H11年基準の境界層

λsoil:土の熱伝導率[W/(m*K)]
T1:土間床外周部の断熱材の厚さ[cm]
T2:土間外周の断熱材の厚さ[cm]
W:土間外周の断熱長さ[cm]

という計算式がモデル図のようなベタ基礎コンクリートの場合のH11年基準での熱貫流率の計算式となります(基礎の内側に断熱材を施工する場合の計算式、外側に施工する場合は別の計算式になります)。注意点としては、「T1」と「T2」の断熱材厚さは単純な断熱材の厚みではなく熱抵抗値を求め、面積当りの値を長さ当りの値に変換する必要があります。

【H25年基準】

詳細計算法と簡易計算法の2通りの計算式があります。どちらを採用するかは任意となっています。

~詳細計算法~
UF,j=1.80-1.36(R1(H1+W1)+R4(H1-H2))0.15-0.01(6.14-R1)((R2+0.5R3)W)0.5

~簡易計算法~
R1+R4≧3の場合
UF,j=0.76-0.05(R1+R4)-0.1(R2+0.5R3)W
3>(R1+R4)≧0.1の場合
UF,j=1.30-0.23(R1+R4)-0.1(R2+0.5R3)W
0.1>(R1+R4)の場合
UF,j=1.80-0.1(R2+0.5R3)W

基礎断熱、H25年基準、モデル
H25基準の基礎断熱熱的境界層

H1:地盤面からの基礎等の寸法(MAX0.4)
H2:地盤面からの基礎等の底盤等上端までの寸法
W1:地盤面より下の基礎等の立上り部分の室外側の断熱材の施工厚さ
W2:基礎等の底盤部分等の室内側に設置した断熱材の水平方向の折り返し寸法
W3:基礎等の底盤部分等の室外側に設置した断熱材の水平方向の折り返し寸法
W:W2及びW3のいずれか大きいほうの寸法(MAX0.9)
(単位は全てm)

となります。べき乗の計算があるので普通の電卓ではH11年基準・H25年基準共に計算できません。関数電卓や表計算ソフトなどが必要になります。

以下に計算結果を表記します。なお、断熱仕様は「無断熱」とします。玄関やUB部の断熱は「無断熱」とすることが認められているため、実際の施工でも「無断熱」のケースを良く見かけるためです。ただし、「無断熱」とした場合でもキチンと計算をして貫流熱損失量は求めなければなりません。

H11年基準 H25年基準
詳細計算法 簡易計算法
UL 2.270
UF 0.076 1.800 1.800

※詳細計算法と簡易計算法の計算結果が同じとなっていますがこれは「無断熱」の場合の計算結果です。断熱材の施工がある場合、詳細計算法の方が有利側の計算結果になることが多いです。

貫流熱損失量の比較

これまでの各部位の拾い寸法、熱貫流率と部位による温度差係数を加味して貫流熱損失量を計算します。

【H11年基準】

周長 土間床等の面積 熱貫流率 温度差係数 貫流熱損失
外気側基礎周長 5.46 2.270 1.0 12.3942
床下側基礎周長 5.46 2.270 0.7 8.67594
土間床等中央 0 0.076 1.0 0
合計[W/(m*K)]又は[W/(m2*K)] 21.07014

 

【H25年基準】

周長 熱貫流率 温度差係数 貫流熱損失
外気側基礎周長 5.46 1.800 1.0 9.828
床下側基礎周長 5.46 1.800 0.7 6.8796
合計[W/(m*K)] 16.7076

 

という計算結果となりました。貫流熱損失量だけを比較するとH25年基準の方が数値が良いようです。これをQ値とUA値で比較するのはNGとなります。なぜならH11年基準では、基礎以外(外壁や屋根、開口部など)の貫流熱損失量の合計を床面積で、H25年基準では基礎以外(同様)の貫流熱損失量の合計を外皮面積で割ります。つまり、分母が異なるわけです。

今回は「無断熱」での検討比較にしましたが、「断熱有り」での検討もいずれしてみようと思います。