床、断熱、熱的境界層

床の断熱設計

木造住宅の床の断熱設計には2通りの設計方法があります。1つ目は、床板の下に断熱材を施工する「床断熱工法」。2つ目は、基礎の立上り部分の屋外側又は屋内側(両方の場合もあります)に断熱材を施工する「基礎断熱工法」。どちらも一長一短があり、優劣はありません。H25年省エネ基準を元にこれらの床断熱を解説します。

住宅の床断熱は天井や外壁などその他の部位よりも施工方法による違いが大きいものです。きちんと設計して、その設計内容を理解した上で現場施工をしないと場合によっては断熱の効果を著しく損なう恐れもあります。快適な省エネ住宅を設計・施工する上でも以下の内容は理解しておきたい内容です。

床の熱的境界層の種類

断熱材を設計・施工する部位は温熱環境上は「屋内」と「屋外」の境界線となることから、熱的境界層と呼びます。床断熱の設計を進める上で、まずこの熱的境界層をどこに設定するのかが重要になります。住宅の場合、バリエーションとしては以下のようになります。

  1. 1階居室の床
  2. 基礎の立上り
  3. 2階居室の床
  4. 玄関土間・UB土間・勝手口土間
床、断熱、熱的境界層
床の熱的境界層の代表例です

1と2の部分の断熱設計・施工はきちんとされていることがほとんどです。しかし、3と4に関しては無断熱となっている現場も珍しくありません。しっかりと熱的境界層のイメージができれば断熱を施さなければならないのが分かる部位です。ところが、「断熱材はただ入っていればいい」という誤った認識が未だ多いので忘れられることも少なくありません。
また、旧基準・新基準ともに4の「玄関・UB・勝手口などの土間床部分」の熱的境界層部位は一定の規模(旧基準では概ね4㎡以下)は断熱施工を省略可能としていることも要因です。しかし、実際には「無断熱」状態になる訳で冬場の冷えた外気はコンクリートを伝わってどんどん室温を下げます。それが証拠に主婦の方を対象に行ったあるアンケート結果で、最も寒さを感じる部屋の上位3位は「玄関・お風呂・トイレ」という結果だったそうです。
予算や施工性など様々な要因により最終的な断熱材の設計・施工方法が決定されるわけですが、大原則としては熱的境界層は連続していなければ快適な住まいとは言えません。

床断熱の特徴と注意点

最も多く普及している床の断熱工法がこの「床断熱」です。床の仕上げ材の裏側に断熱材を施工します。土台や大引きの間に充填する場合と根太間に充填する場合の2通りの方法があります。

木造、床断熱、充填、土台・大引き間、根太間、納まり図
左:土台・大引き間充填断熱。右:根太間充填断熱。

一昔前までは右側の「根太間断熱」が主流でしたが、現在は根太(床の下地材)を無くし厚い床合板を使用する左側の「土台・大引き間断熱」(剛床工法)が増えています。理由は、横架材である土台・大引きに直接面材を止めつけることで水平面の剛性が上がり耐震性が向上し、工期が短縮できるためです。
断熱設計・施工の観点からはこの2つの工法は「熱橋面積比率」の違いがあります。「熱橋」とは、断熱材が途切れて屋内外の熱移動の速度が変わる(断熱性能が弱くなる)部分をいいます。図を見ると分かるように、どちらも断熱材と木材が交互に並び連続していません。性能の低い断熱材と比較しても木材の熱伝導率は断熱材の倍以上です。(半分以下の性能)つまり、熱橋部分は熱的な弱点となるためその面積比率は小さいほど断熱性能を確保しやすいといえます。
H25年省エネ基準では、根太工法の熱橋面積比率は0.8、土台・大引き工法の熱橋面積比率は0.85となるので土台・大引き間断熱の方が5%程度有利となります。また、詳しくは別の機会に記事にしますが「床の気密施工」をする上でも、土台・大引き間断熱の方が施工が簡単になります。

基礎断熱の特徴と注意点

基礎断熱も施工方法により2種類に分類できます。北海道などの寒冷地では立上りの室内外を挟むように断熱施工しますが、関東以西の温暖地ではどちらか片側が一般的です。また、基礎の構造形式はベタ基礎コンクリートでの解説となります。

基礎断熱、外側、内側
左:基礎外側の断熱工法、右:基礎内側の断熱工法

左の図は基礎立上りの屋外側に断熱材を施工する「基礎外断熱工法」です。外気に接するコンクリート表面を連続して覆うことができる工法です。コンクリートの「熱橋」部分が無くなる合理的な施工方法です。しかし、断熱材が表面にあらわしとなるため白蟻による被害に十分な注意が必要となります。また、表面は化粧モルタルを塗るので違和感はありませんが実際には発泡プラスチック系の断熱材のため表面強度は高くありません。(尖ったものだと刺さったりします)
右の図は基礎立上りの屋内側に断熱材を施工する「基礎内断熱工法」です。断熱材が直接土に触れないので、基礎外断熱工法のような白蟻被害の心配は減りまが(土壌処理など他の要因に関しては同様)、内部の立上り部分がある箇所では断熱材が連続しません。そのため外周部より1m程度の範囲は内部立上り部分にも断熱材を施工することが望ましいです。
同種同厚の断熱材で比較すると、熱橋が無い分基礎外断熱の方が若干熱的な性能は高くなります。とは言え、熱橋部分の補強などをすればほとんど数値的な差はありません。なお、水平方向の断熱材は断熱の補強部分で必須施工ではありません。立上りは外側で水平は内側、又は立上りは内側で水平は外側、いずれの組合せでも問題ありません。

床断熱のまとめ

ここまでの解説で「床部分で断熱」するのと「基礎部分で断熱」するイメージができたでしょうか。実はこの2つの施工方法は熱的境界層が違う、と簡単に片付けてはいけないのです。冒頭にあった図を再度載せます。

床、断熱、熱的境界層
床の熱的境界層の代表例です

熱的境界層とは室内と室外を分ける境界線である、と説明しました。そして熱的境界層となるのは断熱材を施工する部分のことをいいます。
何が言いたいのかというと、「床断熱工法」の床から上の方向は室内となり、「基礎断熱工法」の断熱材から上又は室内側方向は室内となるということです。つまり、床下が室内となったり室外となったりするということです。
熱的境界層ラインでは熱移動をさせないため断熱材を施工し、かつ、気密性能も確保しなければなりません。「基礎断熱工法」は外周部を熱的境界層を設定すればよいので簡単なのですが、「床断熱工法」ではUBや玄関、勝手口など床部分に断熱ができないため部分的な基礎断熱となります。そうすると、こうした土間部分との取合い部分は外気を入れないように気密化し、それ以外の床断熱部分では換気のために通気をとる、という設計が必要になります。H25年省エネ基準で土間床部分の断熱が省略可能とされているのは、こうした部分の設計施工が難しいためと予想されます。熱負荷的に小さいわけではないということは、アンケート結果で示されています。
現時点での法規制限では断熱材の施工は任意です。無断熱の住宅を設計・施工する工務店・建設会社はほぼいませんが、取合いの複雑な部分の断熱施工はされていないことがほとんどです。一例に過ぎませんが床断熱工法を採用した場合には、土間床部分の断熱設計施工がきちんとされているかよく確認する必要があります。

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