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H25年省エネ基準の方位係数を検証

H25年省エネ基準では建物の外皮計算の日射遮蔽計算に用いる「方位係数」が大幅に変更されました。結果的に「有利」になったのか、「不利」になったのかを旧基準であるH11年省エネ基準と比較して検証してみたいと思います。

外皮の性能計算で「方位係数」が影響してくるのは「冷房期の日射熱取得量(以下、ηAに略)」の計算結果です。「外皮の平均熱貫流率(以下、UAに略)」の計算では特に方位は影響してきません。UAは暖房時の性能、言い換えると建物内部から屋外へ逃げる熱エネルギーを数値化したものです。一方、ηAは冷房時の性能であり屋外から建物内部に侵入してくる熱エネルギー(太陽による日射熱)を数値化したものといえます。よって、外壁や窓が面している方位が異なると受ける日射量も異なるので「方位係数」により適切に評価する必要があるわけです。

サンプルモデルの概要

外皮の部位 面積[㎡] 日射熱取得率
天井 60.50 0.014
外壁 東面:22.02
西面:20.90
南面:21.50
北面:27.00
0.016
東面:1.86
西面:2.98
南面:12.63
北面:7.13
0.79
その他床 60.50
外皮面積合計 237.02

平面図・立面図などは省略します。計算に必要な外皮面積や熱貫流率などを設定しました。断熱仕様は以下の通りです。

部位 断熱材の種類 厚み[mm]
天井 グラスウール16k 100
外壁 グラスウール16k 100mm
その他の床 押出法ポリスチレンフォーム3種 60mm
金属製複層ガラス

玄関やUBの土間部分の断熱材は簡略化のため計算は省略しました。地域区分は、5と6の二地域としガラスの区分は「2」とします。地域区分をニ地域にした理由は後述します。地域区分については用語の定義のページも参照してください。

各方位ごとの数値

方位ごとの数値は冷房期と暖房期で異なります。5地域と6地域の係数一覧は以下のようになります。

冷房期

方位 5地域 6地域
屋根・上面 1.0 1.0
0.500 0.512
西 0.518 0.504
0.472 0.434
0.373 0.341
南東 0.500 0.498
北西 0.442 0.427
南西 0.520 0.491
北東 0.437 0.431
下面 0 0

暖房期

方位 5地域 6地域
屋根・上面 1.0 1.0
0.568 0.579
西 0.538 0.523
0.983 0.936
0.238 0.261
南東 0.846 0.833
北西 0.297 0.317
南西 0.815 0.763
北東 0.310 0.325
下面 0 0

数値が大きいほど日射の影響が強い(日射熱が侵入しやすい)ということになります。冒頭でηAは「冷房」時に関しての数値と記載しました。しかし、方位係数には「暖房期」もあります。これは、H25年省エネ基準から追加された一次エネルギー消費量の計算で暖房設備の評価に用いるためにあります。暖房を使用する冬季の場合、日射による熱の侵入は暖房エネルギーの削減に貢献できます。新基準での日射熱の評価は、夏は入れず、冬は取り入れるということをきちんと考慮したものとなっています。

旧基準との比較検証

ここからは旧基準との比較をしていきます。H11年省エネ基準では「暖房期」「冷房期」の区分はなく、暖房エネルギーの評価もありませんので、「冷房期」の方位係数のみと比較していきます。また、地域区分の5地域と6地域は旧基準では同じ「Ⅳ」地域でした。H25年省エネ基準ではより細分化されニ地域に区別されています。そのため、今回の比較も5地域と6地域の二地域としました。

方位 5地域 6地域 Ⅳ地域
屋根・上面 1.0 1.0 1.0(規定無)
0.500 0.512 0.45
西 0.518 0.504
0.472 0.434 0.39
0.373 0.341 0.24
南東 0.500 0.498 0.45
北西 0.442 0.427 0.34
南西 0.520 0.491 0.45
北東 0.437 0.431 0.34
下面 0 0 0(規定無)

こうして方位係数の数値だけを比較してみると、旧基準より新基準の方が全ての方位で数値が増えています。延べ床面積≠外皮総面積のため一概には言えませんが、新基準の係数の方が厳しくなっているといえます。次にモデルプランのデータを使って方位係数による日射熱量の差を比較してみます。

部位と方位 5地域 6地域 Ⅳ地域
外壁東面 0.176 0.180 0.159
外壁西面 0.173 0.169 0.15
外壁南面 0.178 0.164 0.147
外壁北面 0.161 0.147 0.104
窓東面 0.736 0.752 0.662
窓西面 1.22 1.186 1.06
窓南面 3.919 3.603 3.239
窓北面 2.101 1.92 1.352
合計 8.664 8.121 6.873

方位の影響を受けない部位は省略しています。表を見てのとおり、旧基準と新基準で差がついているのが分かります。また、外壁から侵入する熱量は小さく窓からの侵入熱がほとんどだということが分かります。

まとめ

H11年基準とH25年基準の方位係数の違いが分かりましたでしょうか?熱損失量まで求めると結構違います。また別の機会に記事にしたいと思いますが、暖房時の性能であるUAは新基準の方がクリアしやすいと感じています。逆に冷房時の性能であるηAは新基準では厳しい数値になりやすいと思います。
省エネルギー住宅の基本的な性質は、「夏は熱を建物の外へ逃がす」「冬は熱を建物の中に留める」という相反するものです。方位係数にしても「暖房期」と「冷房期」では意味合いが同様に逆となります。夏だけ快適に過ごすのであれば、日射熱取得量をグッと抑えればいいのですが冬は日が当たらないような家になってしまいます。省エネ住宅の設計の醍醐味はこうした部分を詳細に解析して、住まい手の価値観に沿った設計をすることだと思っています。

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